公務員のメリット・デメリットを20年勤めた元公務員が徹底解説します
世間で安定の公務員。とりあえず公務員なら間違いないと思われがちですが、しっかりとメリットとデメリットを把握しているでしょうか?
「公務員のであることの良い部分って何だろう?」
「公務員と民間企業はどちらが良いんだろう?」
「どんな人が公務員に向いてるの?」
など、感じていませんか。私も公務員になる前は漠然としていました。
実はそれらの悩みは簡単に答えが出てしまいます。
それはあらかじめ、おおよそのメリットとデメリットを知り、必要なスキルを高めて順応すれば結果どちらでも心配ないということです。
私は過去20年間公務員として勤続し様々な部署を経験し、高い人事評価を得てきました。
そんな元公務員の私が公務員のメリット・デメリットをぶっちゃけます。
これから公務員を目指そうとしている人、あらためて公務員の良さを確認したい人。
そんな方はこちらの記事を読むことで、公務員という行政組織の本質を知ることができるでしょう。
既に現役公務員の方も、良し悪しを踏まえた自身の働き方や、効果的な施策を提案できるようになるでしょう。
公務員のメリット
公務員にはもちろん多くのメリットが存在します。
これらのメリットがあるからこそ常に根強い人気がありますし、実際に働いてみてあらためて感じられた良さもありました。
そんな公務員のメリットを以下に紹介します。
雇用が安定している(クビがない)
悪い事していなければクビになることはないです。
公務員にとっては当たり前ですが、公務員以外の世間一般で見ると当たり前ではないことで、それだけで大きなアドバンテージです。
公務員は基本的に安定した生涯にわたる雇用条件のもとで採用され、段階的な昇給も条例によってきめられています。
民間企業のように経済の変動や市場の不確実性に左右されず、常に一定の経済的安心感があります。
新型コロナウイルス感染症が流行した時には、景気が落ち込み特に飲食業が大打撃を受けてしまいました。しかし公務員であればその間も安定した給与を受給しています
一度公務員になると、先々の雇用に関する不安や収入の悩みはほぼ無くなるといっても良いでしょう。
公平&明確な給与体系で確実に給料UP
公務員の給与体系は一般的に透明かつ公平でわかりやすいです。
経験や職位に応じた等級や号給で定められており、定期的な昇給や特別手当などの条件が明確に規定されています。
公務員職ごとに給料表が存在していて、〇号給は××円~・・のような形で誰が見てもわかるようになっています。
昇給とは給料表の等級や号給があがるという仕組みです
つまり、年齢に応じた年収や月収がわかりやすく計算できます。
ある程度安定的にどのくらい支給されるのかが目に見えやすいということは、金融機関の借り入れや生涯年収に応じたライフプランが設計しやすいというメリットもあります。
社会的貢献でやりがいを感じられる
公務員の業務における基本は社会に対する貢献です。
対人に向けたサービスを意識的に行う機会が多く、自己有用感やその仕事に誇りを持てることが多いです。
また、キャリアが上がると大きな施策の一端を担うようになり、より地域住民に根ざした仕事に取り組むことができ、やりがいだけでなく責任感も増していきます。
公共サービスの提供や政策の実施を通じて、社会全体に良い影響を及ぼしていると自分の存在を意識することができます。
民間企業によっては間接的な社会貢献になってしまいますが、公務員は比較的近い位置で貢献が可能であることから、目に見えやすく貢献していると感じやすい良さがあります。
社会的なステータスが高く信頼性がある
公務員の社会的ステータスは東証1部に上場している優良企業に匹敵します。
この高い属性によって、クレジットカードやローンの審査が簡単に通り、なおかつ優遇金利を受けることができます。
特に住宅ローンなど金額の大きい借り入れをする時に公務員のステータスは大きなメリットになります。
世間一般の評価も高く、職業が公務員となると相手に与える安心感が違います。
ノルマがなく、ほどよい労働環境
公務員の労働環境は部署によって業務量に大きな差があります。
しかしそれも年々改善されており、残業時間の減少や休暇の積極的取得等、私の勤めていた自治体においても少しずつですが労働環境が改善されてきていました。
また、ノルマが発生しないため、売上目標などの余計なストレスが掛かりません。
正確にはストレスの種類が違うという感じです。
今後も働き方改革などでホワイトに進んでいく可能性はあっても、ブラックに進んでいくことは考えにくいです。しかし、一部では繁忙期においてサービス残業をしていることもあります。
楽な仕事ではありませんが利益を追求しない分、上司からの強い圧力や同僚間の競合などが無く、各部署間でギスギスせずに働ける環境です。
多彩な業務分野
公務員の仕事は多岐にわたり、同じ公務員にも関わらず職種や部署によってやるべき仕事がガラッと変わります。
家を建てたり、野菜を売っていたり、テーマパークを運営したり、はたまたラーメン作っていたり・・そんな生活に関わるものをまとめた巨大グループ企業が「公務員」なんです
教育、福祉、環境、法律など・・・多様な分野で知識を備えつつ、職務経験を積むことができます。
1つの仕事を生涯に渡って追求していくのではなく、異動によって広く業務にあたることができるので、飽きることなくその都度新鮮な気持ちで仕事ができます。
福利厚生の充実
公務員は福利厚生が手厚いことで有名です。
休暇の種類も多く、休業中の給与や職務復帰時においても一定の保証があり、優遇されています。
給与天引で国民年金と企業でいう厚生年金も積み立てられ、退職後のセカンドライフも安泰です。
別の記事では公務員の福利厚生全般について詳しく解説しています。
それ以外にも公務員専用の貸付(ローン)や、公共施設や旅行等で活用できる利用補助事業があります。
中小企業ではまだまだ福利厚生面では整備されていない部分も多い中で、公務員は非常に恵まれているといえるでしょう。
・安定の給与とステータス
・福利厚生の充実
・多様な職種
・社会貢献&ノルマなし
公務員のデメリット
公務員には数多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
以下に挙げたものは、私が実際に公務員として勤める上で感じてきたデメリットです。
また、同僚もよく話していた事なので、公務員あるあるとして参考になると思います。
これらのデメリットは公務員の仕事に関連する課題でもあり、公務員としてのキャリアを検討する際には、これらのデメリットを考慮する必要があります。
収入が制約されている(別途収入を増やせない)
公務員の給与は安定していますが、民間企業と比べてべらぼうに高い給与を受けることはありません。
公務員の給与はざっくりいうと以下のような形です。
・年齢に沿った緩やかな昇給
・職務に専念する義務があり、副業にも大きな制限有。
・いくら成果を出しても収入は同年代でさほど変わらない
・若年層は低い給与水準
つまり、収入において下限と上限の制約が生まれてしまうということです。
公務員が都内一等地のタワーマンションに住むような高収入を追求するのは困難であり、その夢を叶える為に収入を増やそうと思っても、原則副業が禁止されています。
投資信託は可能ですが利回りが高いとは言えず、お金を増やす手段が非常に限られています。
企画から実現までの動きが重い
公務員は過去の実績や規則等に縛られることが度々あり、決定プロセスが複雑で遅いことがあります。
企業では役職が無い一般社員レベルでもスピード感を重視して決裁できる場合もありますが、公務員はそうはいきません。
例えば起案文書の決裁を貰う時に、
担当→主任(数名)→係長(数名)→課長補佐→課長→部長
なんていうこともあり、一体どれだけの人に確認してもらえば良いのかと気が遠くなる時もあります。
しかも、一人でも内容に引っかかる人がいればやり直しになる場合も・・修正の内容も文面の表現を変えて~・・とか結構心が折れるレベルです
特に新しい政策やプロジェクトを実行に移す際には、過去の内容や規則なども考慮されます。
新規事業にはとにかく慎重になるためかなりの時間を要し、せっかちな人にはスパッと決まらないこの組織体系にストレスを感じることもあるでしょう。
急な政策変更に左右される
公務員は政治的な影響によって、対応変更や予算削減の影響を受けることがあります。
また首長など組織の長が変わり、政策の方向転換があるたびに業務内容が変動するため、対応がコロコロ変わるとその準備等で結構忙しくなります。
例えば押印が廃止された時に、「印」と表示されている書類をすべて見直して作り直すことがありました。
本当に細かい部分ですがそういった部分は改めて周知して作り変える必要があるんです。
変更時期についても、あらかじめ先を見通すことが難しい場合があり、短期間での長時間勤務を余儀なくされることもあります。
しかし、これは公務員である以上は避けられないことであり、常に柔軟に対応できる姿勢が必要となります。
単純作業による退屈感
一部の公務員の仕事は単調で退屈に感じられるものがあります。
AIに任せておけばいいのでは?と思いがちですが、公務員の世界はアナログです。
一見単純に見える業務についても担当がいなくては成り立たないため、一定数の配置があります。
【単純作業とされる業務の一例】
・文書の受付
・PCに情報を入力する
・データを抽出してアーカイブに保管する
・電話対応
・来客案内
基本は単調な事務作業であり、時期によって同じ業務を繰り返すことも多いです。
変化に乏しい職務は自分の成長&やりがいを感じにくく、仕事のやりがいを見失ってしまうことも多いです。
・収入は人並み(副業原則禁止)
・決定までのプロセスが長くフットワークが重い
・急な政策変更に対応しなくてはいけない
・一部単調作業があり退屈
公務員に向いている人の特徴
結局のところ公務員に実際向いている人はどんな人なのか、長年勤務してきた私はズバリこの3つに当てはまるかどうかで、公務員に対する適性がある程度計れると思っています。
安定した生活を望んでいる
多くを望まないがリスクをなるべく排除して、生活に安定感が欲しいという方にとって公務員はオススメです。
年功序列で定期昇給があり、ある一定の役職までは昇進できます。
定年間際になれば中小企業幹部クラスの給与を受給できます。。
しかし、若年層の給与はその分低く抑えられているので、20代は民間企業と比較しても物足りないと感じる時代が続きます。
淡々と業務をこなせる
ひとつひとつの業務に
「なぜこんな業務が存在するのか・・」
「なぜ自分がこれをやらなければならないのか・・」
などと、疑念にとらわれず淡々と業務をこなせる人は公務員の適性があります。
実は公務員業界で、自分の担当した仕事にプライドを持ちすぎる(こだわりすぎる)のも良くありません。
企業では利益が出る方法ならそれは正義であって組織的な目標でもあります。
1円でも多くコストカットする為にこだわることは考え方に違いはあれど、ある程度周囲も納得してくれるでしょう。
しかし、利益という組織目標がなく、どことなくあいまいな公務員の世界で、個人の強すぎる主張は周りとの軋轢を生みやすいです。
高い倫理観を持っている
どんなに仕事ができても不正に手を染めるような人は×です。
時折ニュースで流れる、公務員の不祥事を見ると胸が痛みます。
公務員の仕事は信用が大事です。
規律違反は論外ですが、書類や報告の締め切りなどの基本的なルールを守れない人も公務員の適性がありません。
公務員・民間企業どちらが良い?
結局、公務員と民間企業ってどっちが恵まれているの?
私の答えは、「人それぞれの適性による」です。
なぜなら職業選択には、個人の価値観や目標が大きく影響をするためです。
「安定」ばかりが目につきがちな公務員ですが、公務員としての仕事にはメリットだけでなくデメリットもあります。
しかし、そのメリット・デメリットを感じない人もいるかもしれませんし、それは個人の価値観によってそれぞれです。
民間企業でも公務員でも職業選択において大切なのは、自分のライフスタイルや価値観に上手く合致することだと思います。
とはいえ、なかなか自分では答えを見出せない方もいると思うので、参考までに3つの項目を考えてみました。
あなたは以下の項目においてあなたはどちらに該当するでしょうか?
安定性 or 冒険心
一部の人々は、安定した給与と雇用を重要視し、公務員の仕事に魅力を感じます。
景気にほぼ左右されない安定感は利益の世界から切り離された公務員ならでは。
定年間際には中小企業以上の給料を得ていることもあります。
一方で、冒険心旺盛な人々はリスクを取り、民間企業や起業に魅力を感じることがあります。
特に営業職などはフルコミッション(完全歩合)制を取り入れている企業もあり、基本給は保障されないものの、成果をあげれば給与は通常では届かないであろう額を手にすることができます。
また、起業についても自分にしかできないサービスや差別化を図れるコンテンツがあれば、十分に成功を見込めるでしょう。
大企業が介入しないスキ間産業というのは割と存在するので、地道に小規模で続けていくこともできたりします。
社会貢献 or 自己実現の追求
社会的な貢献を重視する人は、公共での仕事によって大きな満足感を得ることができます。
公共事業では「収益を得る」というコスト感覚が一部を除いてあまりありません。
良くも悪くも決められた予算の中であれば、採算を度外視することができ、住民に対してより良いサービスを追求することができます。
企業ではどこかで利益を追求していかないと事業として立ち行かなくなりますので、社会貢献とはいえコストや営業などを考えた活動になってしまいます。
一方で、個人の成長や自己実現を重視する人は、スタートアップ企業や独立も視野に入れると良いでしょう。
「自分のやりたい事を自分の責任で貫き通して成功に導きたい」という意思が強い場合、自由度の低い組織で働くことが窮屈に感じるかもしれません。
実際に公務員業界では、合理的でないことも多くあります。
組織の体質上理不尽な部分もあるので、自分の中でどう受け止められるかがポイントです
ハードワーク+高報酬 or ワークライフバランス+平均給与
・体が頑丈
・多少ツラくてもへこたれない
など、自分が何か1つ高い水準にあると自信を持てる場合には、高い報酬を求めて挑戦しても良いでしょう。
その分過酷な労働環境に身を置く覚悟が必要ですが、より良い待遇を求めて転職を行えば報酬は青天井です。
一方で、日本の中小企業に準じた平均的な給与で良く、自分の余暇を重視したい人は、労働条件が整った公務員が適しています。
決して公務員が楽というわけではありませんが、ノルマや成果を求め続けられず指示された業務をこなしていくことで、高給取りとは言えませんが安定した生活を送ることができます。
【結論】社会人としてどちらでも順応できる
結果として、
・これから公務員を目指す人
・これからも公務員でいる人
・民間企業への就職を考えている人
どのような思いで選択しようと人は順応できるので問題ありません。
適切な職業選択は個々の価値観や目標、能力によって異なりますし、年齢を重ねると変わってくることもあります。どのみち正解は自分自身が手繰り寄せるものです。
現に私が公務員の世界から飛び出してどうなるものかとハラハラしていましたが、結局何とかするしかないんだよね・・って思いながら何とか生きています。
努力を怠ってはいけませんが、人間どの環境でもその気になればどうにかなります。
公務員と民間企業のそれぞれにはそれぞれの利点やデメリットがありますので、自分のキャリア目標やライフスタイルに合った方を選択することが重要です。
公務員の場合は安定した給与や福利厚生、社会的貢献度が高い一方、民間企業では柔軟なキャリアや成果主義の報酬体系などが魅力とされます。
自身の適性や興味、ライフスタイルと照らし合わせ、その時点では最適な選択だったと覚悟を決めて研鑽を積んでいきましょう。
どのような道であっても同じ境遇であなたはあなたらしく生活しているはずです。
公務員を目指すなら効率的な学習で最短合格
自分が公務員に向いていると感じたら、あとは合格に向けてひたすら試験勉強に打ち込みましょう。
その際、独学ではなく予備校や通信講座を受講することをオススメします。
別記事ではオススメの講座について紹介しています。
超効率的かつ最短合格を目指しましょう。
公務員のメリット・デメリットはそれぞれある【まとめ】
公務員には
・安定の保障
・福利厚生の充実
・社会貢献とやりがい
と色々なメリットがあります。
しかし、一方で
・決定までの動きが遅い
・収入の制約
・急な政策変更に左右される
・単調な業務が存在する
といったデメリットを感じる部分もあり、組織に属していると色々とモヤモヤする部分はあります。
しかし、公務員という職業は恵まれた環境であると言えますし、これ以上の待遇を望むのは欲張りであるとも思えます。
一方で、民間企業は公務員にはない独自の良さがあり、それは公務員では味わうことができません。
どちらも一長一短あり、受け取り方も人それぞれ。
どちらが良いかと言われると、無いものねだりになったりと悩ましいところです。
公務員のメリットとデメリットを知って改めてじっくりと今後の人生を検討したいという思いはおそらく多くの方が持たれるであろう悩みです。
ただ、結局どちらでもあっても人生は一度きりで、選択しなかった側の自分を見ることができません。
となれば、現状に満足しているかどうかをひとつの判断基準にしてみるのも良いのではないでしょうか。
満足していれば自分にとって良い選択だったと言えるでしょうし、満足していなければ満足できるライフスタイルを確立するよう改善にむけて動きだしましょう。