公務員は残業代が出ない!?【仕組みについて元公務員が丁寧に解説】
民間企業ではよく耳にする残業代。
ところで、公務員にも残業代はあるのでしょうか?
「公務員の残業の仕組みはどうなっているの?」
「公務員の残業代はどのように計算されているの?」
「公務員は結構残業しているの?」
など、たくさんの疑問がありませんか?
私も公務員業界で勤めていなければ、分からないままだったと思います。
また、中には残業代の仕組みを良く分からないまま働いている職員もいます。
これについて、簡単にまとめると
公務員にも残業は明確に定められており、残業代も規程に基づいて支給されます。
しかし残業せざるを得ない場合であっても、予算の都合で必ず支給されるわけではない。
ということになります。
また、公務員の残業については規程上と実態とで歪みが生じています。
私は公務員業界で20年間勤続し、時にはハードな部署で残業をしてきました。
月の残業時間100時間超もしょっちゅうで、残業代も請求してきましたが、その多くが全額支給とはいかず、予算の範囲内で支給される状況でした。
そんな私だからこそ話せる公務員の残業代事情について詳しく解説していきます。
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【なぜ残業代が出ない?】予算の上限と超過勤務規制
ズバリ残業代が出せない理由は大きく2つあります。
- 予算の上限があること
- 超過勤務の上限規制があること
この2点がある段階で、残業した分が丸々出る事は難しいことが何となくわかると思います。
詳しく見ていきましょう。
理由1:予算の上限がある
簡単に言うと、公務員は財政面でたくさんの縛りがあります。
そのため、各地方自治体において人件費に掛けられる予算は毎年決まっています。
自治体は様々な行政活動を行っているが、それに伴い予算も複雑多岐にわたる。
一方で、予算は明確かつ民主的であることが求められており、このためいくつかの予算原則が設けられている。具体的には、次の7点である。
① 総計予算主義の原則
② 単一予算主義の原則
③ 予算統一の原則
④ 予算事前議決の原則
⑤ 会計年度独立の原則
⑥ 予算単年度主義の原則
⑦ 予算公開の原則(引用:議員NAVIより)
このうち⑥の「予算単年度主義の原則」という名前の通り、
「毎年出せる予算はあらかじめ決める」
と、原則を掲げているので、当然残業代にも上限が存在しています。
各部署で際限なく残業を認めていたら、原則を無視している上に人件費が膨れ上がってしまいます。
予算書は収入=支出で作られるんですよね・・・
入ってくる収入以上に支出が増えれば、財政が成り立たなくなってしまいます。
こういった事情から何でもかんでも残業を認めるわけにはいかない状況が生まれています。
理由2:超過勤務時間の上限規制がある
公務員も残業時間の規制があるので、それを超えて残業申請するわけにはいきません。
行政が率先してルールを破るわけにはいきませんからね・・
ちなみに総務省による国家公務員の超過勤務の上限は、人事院規則により、一般職では次のとおり定められています。
・一般部署
→月間45時間以下、年間360時間以下
・国会対応など業務の調整が難しい部署
→月間100時間未満、年間720時間以下
(地方にも同様の通知が降ろされています)
例えば、毎月100時間残業を1年間(1200時間)認めることはできないということです。
ですので、それでも残業する場合は・・サービス残業ですね・・
サービス残業というと違法性を感じますが、時間外業務を認めていないということになります。
公務員の残業代は「時間外勤務手当」
公務員の残業代は、法定の勤務時間以外で労働を行った場合に支払われる報酬ですが、本自治体では「時間外勤務手当」として毎月の給与に加算されていました。
時間外勤務申請(残業代請求)の流れ
時間外勤務手当は以下のような仕組みで申請から承認を経て支払われており、不適正な受給はできないようになっています。
管理職への申請
原則として、残業は自分の意思で自由に行って良いものではありません。
「何の業務をする為に、どのくらいの時間残業するか」を管理職に申請します。
この残業の内容を詳細に申請することは、不当な長時間勤務を防ぐことにつながります。
また、明らかに非効率的な時間外業務申請は認められず、あくまで上長の承認がなければ残業をすることが出来ない仕組みになっています。
管理職からの勤務命令
時間外勤務申請を管理職が確認し、残業内容として、適当であると認めた場合に、あらためて時間外勤務を命ずることになります。
ややこしいですが、「残業お願いします」→「よしやっていいよ」となるわけですね
当然上長が時間外の勤務内容として適当でないと認めれば、残業をしても残業代が支払われることはありません。
また、その場の申請内容だけでなく、日頃の勤務態度も考慮して判断される可能性があります。
例えば、勤務時間内にやたら休憩が多かったり、離籍が多かったり・・実績が不十分であるなど通常時間内の勤務に改善の余地がある場合には、まずはその改善を求められるでしょう。
残業時間の記録
民間企業同様、公務員も労働時間を正確に記録する責任があります。
出社と同時にタイムカードを切ったり、勤怠システムで入力したりと様々な方法がありますが、実際に残業した時間と業務内容を詳細に記録し、時間外勤務手当として給与に反映させる際の根拠とします。
この部分を忘れてしまうと、残業時間との整合性が取れなくなり、最悪の場合支給されないこともあります。
残業代の算出
残業代の計算は、月ごとの累計残業時間に基づいて行われます。
残業時間は通常、法定の勤務時間を超えた時間とされ、例えば1日の通常労働時間が8時間なら、それを超える時間が残業時間となります。
ただし、労働基準法の観点から残業を行うと休憩時間も増えることになります。
労働基準法第34条において、次のように規定されています。
「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」
つまり公務員としてフルタイム勤務だと45分はマストです。
その後勤務時間8時間を超える部分は残業にあたるので、15分の休憩を加え計1時間としなければなりません。
例えば・・
8:30~17:15を勤務時間とした場合
・8:30~17:15・・休憩時間45分
その後1時間残業を行ったと場合
・8:30~18:15・・休憩時間1時間
残業代の算出基礎は
・17:15~18:15・・休憩時間除く45分間
※実際の残業代は15分の休憩時間を除いて算出されることに注意。
良く分からない方は、「滞在時間=残業時間ではない」という所だけ覚えておきましょう。
残業代の支給
公務員の残業代は、条例に基づいて計算され、他の手当と同様に時間外勤務手当として給与支給日に合算して支払われることが多いです。
ただし、年度またぎで役職が変わったり、基本となる給与の額が変わった場合には、別日に支払われることもあります。
給与支給日によりますが、当月の実績が翌月の給与に反映されることが多いですね。3月分の残業実績は4月の給与支給日に乗っかってくるということです。
残業代に関する詳細は、地方自治体の条例および労働条件によって異なりますので、自身が所属する自治体の給与体系の仕組みを良く知っておきましょう。
残業時の給与額はどのくらいもらえる?
残業代は基本「時給換算」です。
具体的な公務員の残業代と手当の額は、地域によって異なり、職種や組織によっても支給できる金額が異なります。
以下は、一般的な例として示してみました。
これらはあくまで例であり、実際の金額はそれぞれ異なることにご注意ください。
支給額の計算式
支給額の基礎となる計算は
基本月給に対する1時間あたりの時給×支給割合
です。時給に割合を掛けて給与に上乗せするイメージです。
また、支給割合は以下のように条件によって変わります。
【支給割合】
条件 | 支給割合 |
平日の勤務時間以降の残業 | 1.25倍 |
残業時間が22時を超えた場合 | 1.5倍 |
残業月60時間超&22時を超えた場合 | 1.75倍 |
この割合は労働基準法に基づいたものなので、多くの自治体では残業時間帯やタイミングによって支給率が変わります。
じゃあとにかく遅くまで残業しまくれば、かなりの給料が貰える!って思っちゃいますよね・・
ところが、そううまくはいきません。支給計算についてはあくまで規程上の話。
本自治体の話をしますと、多くの部署では予算が割り与えられており、職員はその予算に基づいて申請しなくてはなりません。
本自治体では、予算を超えて時間外勤務を申請する時は上長の協議を要しました。
誤解の無いよう申し上げておきますと、権利としては申請できますし、支給を拒まれるということもありません。
しかし、予算を超えた時間外勤務については、管理職からの細かいチェックが入ります。
そして時間外勤務縮減に努めるためにどうするべきか、対策や報告を迫られます。
財政部から再配当してもらうわけですから、何の根拠もなく「はい追加でどうぞ」とはいかないわけです。
残業代支給のために、残業の報告資料を作る・・。これは本末転倒。正直これほど無駄だと感じる作業はありません。
その為、皆予算内に収めるように勤務しており、予算を超過する場合は、サービス残業といった実情がありました。
また、人事院でも超過勤務については原則月45時間、年間360時間と制限を設けています。
各省各庁の長は、原則として1箇月について45時間かつ1年について
人事院「超過勤務の上限等に関する措置について」より
360時間の範囲内(他律的な業務の比重の高い部署に勤務する職員に対
しては、1箇月について100時間未満、1年について720時間かつ2~
6箇月平均80時間等の範囲内)で、必要最小限の超過勤務を命ずるもの
とする。
つまり、どのような時給割合であっても年間で支給できる総額は予算および規程によって既に決まっているということを理解しておきましょう。
・仕組みはどうであれ、残業代は無制限ではない。
・ある一定以上の残業は管理職からの厳しいチェックが入る
公務員の残業時間の実態はどうなっている?
公務員の残業時間は総務省のデータから見ると、月12~15時間程度とバラつきがあります。
年間にしてみると、132~180時間程度が公務員の残業時間の目安になります。
(令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果より)
ただし、これはあくまで統計から読み取れる数字です。
そもそもこの統計結果は、各所属への調査に対する回答をまとめ、挙がってきた数字の平均です。
要するに、過少申告されたとしても、その事情は統計上反映されないということです。
実際は、超過勤務の制限を超えており、調査では報告できないという都合から、これらの統計情報に載ってこない残業の実態があることを知っておく必要があります・・。
残業については人事院が原則月45時間、年間360時間と制限を設けていますが、これに加えて
各省各庁の長は、職員に1箇月について100時間以上又は2~6箇月 平均で80時間を超える超過勤務を命じた場合には、本人からの申出がなくとも当該職員に対して医師による面接指導を行うものとする。
人事院「超過勤務の上限等に関する措置について」より
としています。
これでは毎月80時間を超えた勤務時間を正直に報告している人は、医師との面接に時間を取られてしまいますよね。
80時間超過勤務するほど忙しいのに医師と面接している時間が果たしてとれるのでしょうか・・。
というわけで、そうはならないよう何かと工夫をするわけです。
そのような事自体が問題ではありますが、表面に出ている情報と現実は常に同じとは限らない事情もあるということを心に留めておきましょう。
総務省の統計は、適正な労働条件という前提のもとで調査・報告された数字です。
残業代が全額支給されない公務員もお金は増やせます
結局めちゃくちゃ働いても、残業代が全部出るとは限らないのね・・何だか公務員ってやるせないなぁ。。
そう思った方でも、給料とは別にお金が増えていく仕組みがあることを知っておけば、多少残業代が出なくともあまり気にならなくなります。
それは資産を運用していくこと。つまり「投資」していくことです。
投資と聞くと危険なイメージがありますが、個人的にオススメなのは投資信託。
正しい知識を身に着けて適切な選定をすれば、あとはゆっくりですが、高い確率で資産を増やしてくれる方法です。
知識も身に着けずに、行動も無ければ、当然お金も増えていきませんので・・・やるかやらないかだけですね。
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公務員の残業代は諸事情の上限で出ないことも【まとめ】
公務員の残業代について解説してきました。
まとめると以下の通りです。
・公務員の残業代が満額出ないのは・・
①行政運営の原則と予算の上限があるから
②超過勤務の規制があるから
・公務員の残業代は「時間外勤務手当」
この手当は法定の勤務時間外に働いた際に支給され、毎月の給与に加算。
残業をするためには、まず管理職に申請が必要。
残業内容やその理由を詳細に申請し、不当な長時間勤務を防ぐために管理職の承認を得ることが基本。
非効率的な業務申請は認められず、上長の承認がなければ残業は認められない。
もし管理職が残業内容を適当と認めれば、それに基づいて時間外勤務が命じられます。
ただし、上長が内容を適当でないとすれば当然残業代の支給はありません。
これには日頃の勤務態度も考慮され、通常の時間内での改善を求められる。
残業時間は正確な記録によって時間外勤務手当として給与に反映。
記録を怠ると支給が受けられないこともある、日頃から勤怠管理を意識すること。
残業代の計算は、月ごとの累計残業時間に基づいて行われる。
法定の勤務時間を超えた時間が残業時間となり、これに伴って休憩時間も発生。
具体的な計算方法には15分間の休憩時間を加味しなければならない為、要注意。
・公務員の残業代はどのくらい?
通常、月給を「時給換算して支給」
時給に対して一定の割合を追加して算出される。
支給額は地域や職種、組織によって異なりますが、基本的な計算方法は国(国家公務員)に準じており、広く一般的に使われています。
ただし、時間外勤務は予算に基づいて行われている。
予算を超える超過勤務には、「なぜそうなったのか?」管理職の厳格なチェックあり。
・公務員の残業時間平均
統計上「月11~15時間程度」、実際は超過勤務の制限を超える場合もある。
自治体によっては制限を超えた勤務が頻繁に行われている実態も。
話が違うじゃないか・・と思ってしまうかもしれませんが、広く公開された情報と実際の業務量が見合わず、歪みが発生してしまうことも理解しておきましょう。
このように公務員の残業や支給については様々なルールがあり、時にはルールと実態に乖離が見られることもあります。
今回は私が勤務していた自治体の実情を基にお伝えしましたが、地方自治体の条例や労働条件によってそれぞれ異なるため、所属する自治体の給与体系をよく理解しておきましょう。
また、残業代で月々の収入を少しでも増やそうと考えているのであれば、給与で増やすという発想よりも、働いている間に別の部分で資産を形成してくれている状態を作るのがオススメです。
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