公務員の仕事が「つらい」と言われる決定的理由【元公務員が解説します】
「最近、公務員としての仕事が退屈に感じる」
「他の職場ならもう少し楽なのかな?」
「公務員の業務ってなぜこうも非効率なんだろう?」
このような悩みを抱えている現役公務員の方も多いのではないでしょうか。
私も長年勤め、あらゆる違和感を感じてきたのでよくわかります・・
ですが、自分の意識次第でそのような環境でも豊かさを感じることは可能です。
簡単に言うと、公務員組織には情報技術の導入が遅れていたり、保守的な業務スタイルが根強く残っていたりと、民間企業とは違う不条理を感じることもたくさんあり、つらいと感じる要因になっています。
また、公務員の業務には独特な苦労がありますが、考え過ぎると沼にハマります。
ですが、日頃の考え方や行動次第で、前向きに日々働いていける方法はあります。
公務員として、少しでも前向きに日々の業務に取り組むためのヒントを、20年の経験からご紹介していきます。
公務員特有の仕事のつらさ
公務員の業務内容とその独特な職場文化
公務員の業務は、民間企業と違い、特有の文化やルールが根付いているため、合わせることに苦労することがあります。
例えば、公務員の仕事は法令や規則に基づいて行われることが多く、担当ごとの業務内容が細かく定められています。
そのため、昨今の柔軟な判断が求められる状況であっても横の連携が上手くできません。
結果として、自身の無力感や働き方に堅苦しさを感じることがあります・・・
また、公務員は国や自治体の住民に向けた公共サービスを提供しているため、幅広いニーズや多様な価値観に応える責任があります。
その一方で、失敗は許されるものではなく、職場においては慎重さと確実さが重視される傾向にあります。
そのため、ひとつの案件についても複数の承認が必要であったり、リスク管理に時間をかけたりすることが一般的で、なかなか仕事が前に進んでいかない感覚を味わうこともあります。
こうした文化の中で働くことはツラいと感じる職員もおり、新しいアイデアや変化が求められることは少なく、保守的かつ異様な職場と感じることもあります。
- 公務員の仕事は法令や規則に厳密に基づく
- 複数の承認やリスク管理のための時間がかかる
- 保守的な風土が根付いており、変化を求めづらい環境
情報技術の遅れとその影響
公務員の業務で多くの職員が「つらい」と感じる要因の一つに、情報技術の導入が遅れている点が挙げられます。
民間企業がデジタル化を推進する一方で、公務員の職場では、未だにファックスを使った業務が多く、紙の資料や手書きの書類が残っている職場も多いです。
コレって民間企業からすると驚愕の事実ですよね・・
このようなITの遅れが、業務効率を大きく低下させており、特に忙しい時期や残業が増える異動のシーズンには、効率の悪さがより顕著に現れます。
また、情報システムが古く、新しい技術やシステムの導入が限られているため、職場内での情報共有やプロセスの効率化が難しい現状があります。
これによって、組織全体での把握や、市民からの問い合わせ対応にも時間がかかり、非合理的だと感じることがあります。
- 未だにファックスや紙の資料が多く使用される
- ITの遅れが業務効率の低下に繋がる
- 古い情報システムで業務負担が増大
保守的な仕事のスタイル
多くの公務員の職場では、前年の業務内容や手法をそのまま引き継ぐことが一般的です。
公務員の職務は、法的な背景に基づくため、変更には多くの検討が必要であり、さらにリスクを避けるため、変化に対して保守的な傾向が強くなります。
このため、新しい手法や業務の改善が難しいことが多く、改善を望む職員にとってはやりがいが感じにくい場面も少なくありません。
特に、職場の上層部では、変化に対して慎重であることが多く、職員からの改善提案が取り入れられるケースは少ないです。
こうした「前年踏襲主義」が根付いているために、新しいアイデアや発想が通りにくく、業務改善が難しい現実があります。
- 前年の手法をそのまま踏襲する保守的な職場
- 改善や新しい手法の導入が難しい
- 変化に対して慎重な風土が強い
官僚制の構造と業務環境によるつらさ
日本の行政組織は官僚制を採用しています。
官僚制とは、規模の大きい組織や集団において、合理的・合法的権威に基づいて管理を行うシステムで、以下のような特徴があります。
【官僚制の特徴】
1.職務の内容や責任、立場などを細かく階層化、分業化
2.上意下達の指揮系統で、ピラミッド型のヒエラルキーで構成
3.資格や能力を重視した採用、血縁や血統、家柄などその他の要素無し
4.文書主義(書面での事務手続き)
この官僚制による日本の公務員組織が現代においてどのような影響を及ぼしているのか見ていきましょう。
官僚制の影響
官僚制は、職務内容や責任が細かく階層化されているため、柔軟な対応が難しい構造です。
上位からの指示が絶対であり、ピラミッド型の組織が構築されているため、下層の職員が自由に動くことができず、対応が遅れることも多々あります。
構造的な問題が業務の柔軟性を阻んでいる場合もあるわけです
このためスピード感が求められる現代において、現場で柔軟な判断や即時対応が必要な場面でも、上層部の許可や手続きが必要になり、業務が進みにくい状況が発生しがちです。
また、こうした官僚制の構造によって、職員同士の連携や業務の分担が複雑になり、効率的に進めることが難しくなります。
効率化を図りたいと考える職員にとって、こうした官僚制の構造はつらいと感じる原因となります。
- ピラミッド型組織で柔軟な対応が難しい
- 上位の指示が絶対で自由が少ない
- 効率的な業務遂行が難しい
上意下達とピラミッド型組織の弊害
官僚制には、上層部からの指示が下層に伝達される「上意下達」(トップダウン)の文化が強くあります。
このため、現場での判断が尊重されにくく、自由に意見を出せる環境とは言えません。
現場の声が上層部に届きにくいため、意思決定が遅く、仕事の効率が下がる原因となります。
さらに、この上意下達の体制によって、現場の柔軟な対応が制約され、指示通りに進めなければならない状況が発生します。
このような堅苦しさを感じさせる組織構造が、現代の公務員の「つらさ」を感じさせる要因の一つです。
- 上意下達の文化が強く、現場の声が届きにくい
- 意思決定が遅れやすい
- 指示通りの業務進行で柔軟性が乏しい
試験をパスしても仕事がデキない人がチラホラいる
資格・能力で採用する公務員試験では、一般教養を用いたテストが一般的です。
その後、2次で面接試験がありますが、得点配分で1次試験が優秀な者はそのまま2次試験を無難に通過し、合格となることもあります。
しかし、現代で求められる力は多様な「ヒューマンスキル」です。
学力を計るテストでは見えない力が必要とされており、その力が不足していたとしても、テストについては十分な対策を練ることで通過できてしまいます。
その結果、テストは出来ても仕事がデキない人が一定の割合で採用され続けています。
しかも、例え能力に問題があっても、クビになることはありません。
仕事がデキないだけならまだしも、経験を積むにつれて諦めてしまい、やる気が見られない人もいますからね・・
公務員の職場では、そのような人を含めた様々な部署が存在しており、こうした人がチームにいることで、全体の業務効率に悪影響が出ることもあります。
待遇面でのつらさ
若いうちは給料が安い
公務員の給料体系は年功序列で、若い頃は収入が低いことが多く、生活の負担を感じやすい点も公務員特有のつらさのひとつです。
特に、20代から30代前半の若手公務員にとっては、生活費や住宅ローンなどの出費が増える一方で、給与の上がり方が遅いため、生活に余裕を感じにくいという声もあります。
また、民間企業であれば年次や実績に応じてインセンティブや昇給があることも多いですが、公務員の場合、成果主義とは異なる給与体系のため、努力が直接的に報われにくいと感じることもあります。
こうした給与面での制約は、やりがいを求めて仕事に取り組む公務員にとって、モチベーションを保つのが難しく感じる原因の一つです。
- 給料体系は年功序列で、若手の収入が低め
- 生活費や家族の養育費が増える中、昇給が遅い
- 実績に応じたインセンティブがなく、やりがいが感じにくい
副業ができない
民間企業と異なり、公務員は法律で副業が制限されており、収入源が給料に限定されるため、給与の低さを補う手段が限られています。
そのため、給料の以外の収入を増やしたいと考える人にとっては、この制約が非常に窮屈に感じられます。
最近では、家庭の事情や将来の資産形成のために副業をしたいと考える公務員も増えていますが、法律上の制限のために実際は難しい状況です。
副業ができないため、例えば「ポイ活」などの方法で少しでも生活の足しにすることが工夫として挙げられますが、いずれにせよ、収入源を増やす手段が乏しい点は、待遇面での大きなつらいと感じる面の一つです。
- 副業が法律で制限されており、収入源が限られている
- 家庭事情や資産形成のために副業を考えても実行が難しい
サービス残業も時にはある
「公務員=働いた分安定して報酬が得られる」というイメージを持たれる方も多いですが、現実にはサービス残業が発生することもあります。
特に、災害対応やイベント、年度末の繁忙期など、業務が集中する時期や人員不足が発生している部署では労働時間が増える傾向があります。
公務員の場合、残業が全て申請できるわけではなく、予算制約などの理由から時間外手当の申請が認められにくい状況もあります。
実際には、上司からの暗黙の了解や職場全体の習慣として残業が当たり前とされている場合もあるため、職員にとっては負担となりがちです。
制度上は改善が進んでいるものの、実態との乖離があることが課題であり、働き方改革の一環として今後の対応が待たれます。
【対策】公務員あるあるなので考え過ぎない
上記のような悩みは多くの公務員が持っています。
しかしこういった組織的な問題は、長い間繰り返されてきたことです。
公務員とは良くも悪くも「そういうもの」なんですよね・・
とはいえ現状を嘆くのではなく、自分自身の公私含めた人生を前向きに楽しむことにエネルギーを向けましょう。
時間を掛けて組織の変化を待つ
長く勤続することによって、ポジションが変わったり、組織自体が改善されることを待つのも一つの方法です。
公務員組織も少しずつですが、情報技術を導入したり、柔軟な職場環境を目指す改革が進んでいます。
今後、さらにデジタル化やITシステムの刷新が行われれば、業務の効率化も進みますし、従来のような業務のつらさが軽減される可能性も十分にあります。
時間は掛かります。焦らずに、どっしり構えておきましょう!
また、自身が齢を重ね、昇進によって役職や業務内容が変わることで、業務における裁量が増えたり、意見を反映しやすくなる環境に近づくことも考えられます。
そのため、今は目の前の仕事に集中し、環境が改善される時を待つことも、負担を軽くする一つの対策となるでしょう。
自分自身を高める機会を増やす
公務員として仕事に取り組む中で感じるつらさも、あくまで組織の中での話です。
あなた個人の成長を止める必要は全くありません
「組織」と「個人」という2つの視点を変えながら、自分自身を高めるチャンスを増やしていきましょう。
自身ができる業務の効率化やスキルアップに関心を持ち、自己成長に繋がる取り組みを進めることで、仕事へのモチベーションや将来的な可能性が広がります。
たとえば、
- 情報技術やプログラミングの基礎を学ぶ
- エクセルや自動化ツールを駆使して業務改善を試みる
- 資格取得や語学スキルの向上させる
これらは、公務員としての専門性を深めるだけでなく、いざという時の転職やキャリアチェンジの選択肢を増やす一助となります。
さらに、自分の意識や能力が向上することで、周囲へのポジティブな影響をもたらすこともでき、組織全体の改善にも繋がるでしょう。
公務員としての立場を超えた人間的な自己成長を目的にすることで、日々の業務にやりがいが生まれ、公務員としてのキャリアにもより前向きに取り組めるようになります。
つらい時期でも「学びの場」と捉え、自分の未来への投資と考えることで、より豊かなキャリアと人生を築いていけます。
仕事を人生の全てとしない
公務員を目指す方は責任感が強く、業務に対して真面目に取り組む方が多いため、つい仕事に全てのエネルギーを注いでしまいがちです。
しかし、仕事に意義を求めすぎると、自分自身が息苦しくなってしまいます。
仕事も大事ですが、それ以外も含めてあなたの人生だということです
時には自分の趣味やプライベートの時間を大切にし、仕事に対する過度な期待や負担を手放しましょう。
特に、公務員の業務体系は土日祝日休みが多いため、仕事以外のプライベートな時間や人間関係、趣味や習い事を充実させることができます。
家族や友人と過ごす時間、自分をリフレッシュする趣味に没頭することで、心の健康を保ちながら仕事にも取り組むことができます。
公務員の現状を客観的に見据えつつも、人生は仕事だけではないという視点を持つことで、より豊かな生活が送れるように心がけましょう。
- 仕事に意義を求めすぎず、プライベートな時間も大切にする
- 働き方は変わらなくても自分自身の思考はどんどん変えて良し
- 「人生は仕事だけではない」という視点を持つことが大切
公務員はツラいと感じても豊かな人生は送れる【まとめ】
公務員のつらさについて解説してきました。まとめると以下の通りです。
公務員特有の仕事のつらさ
- 業務の堅苦しさ
公務員の仕事は法令や規則に厳密に基づいており、業務には複数の承認やリスク管理が必要。新しいアイデアや柔軟な働き方が求められづらく、保守的な職場環境にストレスを感じる職員もいる。 - 情報技術の遅れ
公務員の職場では、未だにファックスや紙の書類が使用されており、IT化が遅れている。このIT遅れが業務効率を下げ、特に忙しい時期には効率の悪さが顕著になる。新しいシステムの導入が難しく、現場での情報共有が円滑にいかないことも多い。 - 保守的な仕事のスタイル
公務員職場には前年の業務内容をそのまま踏襲する「前年踏襲主義」が根付いており、改善提案が通りにくい傾向がある。新しい手法の導入には上層部の許可が必要なため、柔軟な対応が難しい。
官僚制の構造と業務環境のつらさ
- ピラミッド型の官僚組織
官僚制により、職務内容や責任が階層化されているため、柔軟な対応が難しい。上層部の指示が絶対で、現場職員の自由度が低く、意思決定が遅れることも多い。このため、効率的な業務遂行が難しい状況にある。 - 上意下達と現場の制約
上層部からの指示が強いため、現場の判断が尊重されにくい。現場の声が上層部に届かず、意思決定の遅れや柔軟性の欠如に繋がり、現代の仕事スタイルと乖離している部分がある。 - 試験と実務スキルのミスマッチ
公務員試験は学力を中心に評価するため、実際の職場で必要とされるヒューマンスキルが不足している場合が多い。能力が問題であっても、仕事が継続されるケースがあり、周囲の効率に影響を及ぼすことも。
待遇面でのつらさ
- 若年層の給料の低さ
公務員の給与体系は年功序列で、若手の収入は低め。特に20代から30代前半の公務員は、生活費や住宅費などの負担が重く、昇給の遅さが生活の圧迫要因となりやすい。民間企業のように成果に応じたインセンティブがなく、努力が報われにくいと感じることも多い。 - 副業の制限
公務員は法律で副業が制限されており、収入を増やす方法が限られる。家庭の事情や将来の資産形成のために副業を希望する公務員も増えているが、実現は難しく、やりくりの負担が大きい。
早急な変化を望まずじっくりキャリアを積む
- 組織と個人という2つの視点で自分自身の行動を考える。
- 自分自身の能力を高めていく際に組織はあまり関係ない。
- 仕事は人生の全てではないので、のめり込みすぎないよう注意。
公務員特有の職場文化や業務体制により生じるつらさは、あるあるです。
ですが、自分の意識と行動の持ちようで、仕事を含めた人生そのものを豊かにすることは十分に可能です。
仕事とプライベートのバランスを保ちつつ、時には息抜きしながら長い公務員LIFEを上手に送ってくださいね。